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東京高等裁判所 昭和29年(ラ)476号 決定 1954年11月11日

抗告人 債権者 柏崎十一郎

訴訟代理人 盛川康

相手方 債務者 吉田重雄

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告代理人は「原決定を取消す。相手方の東京都品川区西戸越一丁目六百五十九番の一の宅地百六坪八合一勺のうち東側五十七坪五合に対する相手方の占有を解いて、抗告人の委任する東京地方裁判所執行吏にその保管を命ずる。執行吏はその現状を変更しないことを条件として、相手方にその使用を許さなければならない。但し、この場合に、執行吏はその保管に係ることを公示するため適当の方法をとり、相手方はその占有を他人に移転し、又はその占有名義を変更してはならない。」との裁判を求め、その理由として、別紙記載のとおり主張した。

抗告人が本件土地に対し罹災都市借地借家臨時処理法第九条第二条によつて昭和二十三年八月中賃借を申し出たがその当時本件土地が都市計画として内閣の認可を受けた緑地に指定を受けており、抗告人は都市計画法第十一条ノ二、罹災都市における建築物の制限に関する勅令第一条、第三条により必要とせられている建築について東京都知事の許可を受けていなかつたことは、抗告人の認めているところであるから、抗告人の相手方になした賃借の申出は罹災都市借地借家臨時処理法第九条、第二条第一項の要件を具備していないのであり、無効なものといわなければならない。抗告人主張のように昭和二十五年三月二日に本件土地に対する緑地の指定が解除せられたことは、本件記録に添付された品川区長の回答書によつて明であるが、その一事で無効であつた抗告人のなした借地の申出が遡つて有効となるものではなく、このように解することは抗告人主張のように右法律の精神に反するものでもない。又抗告人主張のように昭和二十三年八月頃本件土地の緑地指定が解除の予定であつたとの主張については、これを認めることのできるなんの疎明もないから、このことを前提とする抗告人の主張は理由がない。

故に抗告人の右賃借の申立が有効であることを前提とする本件仮処分の申請は、その余の点についての判断をなすまでもなく失当であるから、これを棄却した原決定は相当で、本件抗告は理由がないから、本件抗告を棄却し、主文のように決定する。

(裁判長判事 柳川昌勝 判事 村松俊夫 判事 中村匡三)

抗告の理由

一、原決定は抗告人(債権者)の主張を排斥した其理由は当初本件土地は部分計画として内閣の認可を受け緑地の境域に指定せられあるので本件土地上に建物を築造するには東京都知事の許可を必要とする(都市計画法第十一条の二戦災都市における建築物の制限に関する勅令第一条第三条に依り)ところ未だ其許可を受けていないので罹災都市借地借家臨時処理法第九条同法第二条第一項に反するから無効であるとの理由である。

然れども該決定中に明示せらるる如く既に該土地は昭和二十五年三月二日その指定が解除せられた事実は認めて居るここに於て是れを観るときは既に緑地の境域は解除せられて居る以上何故に従前の建築に付東京都知事の許可を必要とする理由が存在するのか其了解に苦しむと同時に理論の矛盾も甚だしい。

二、罹災都市借地借家臨時処理法は立案の趣旨より又立法の過程より看ても旧来の権利者並に居住者を他の者に優先して可能の限り復帰再建せしむると同時に土地権利者の専横を抑止した特別法であつて申出当時(抗告人)地域の性格は緑地帯指定であり之れに伴う制約として建築許可は必要であつても後日に至り該地域は特殊性は解除せらるるに於ても尚且つ従前の制約の建築許可は無い以上抗告人の申出は無効であると云うことは処理法の精神を無視した法律解釈の違背である。

三、判決手続にしろ決定手続にしろ審理終結当時の事実状態と法律解釈に依り判断の結論を与ふることは定説である。

斯る理由よりするも緑地の指定は解除せられある以上之れに対応する建築上に付いても特殊条件手続の履践は必要のないことは今更呶々するの必要はない筈であるにも拘らず之れを必要とするは事態の均衡を失すると同時に抗告人(申出人)に苛酷の義務を強制し其の保護に欠くる処あるを以て首肯し得ざるものなり。

四、加之抗告人(債権者)の前記本件土地の賃借の申出当時たる昭和二十三年八月頃は既に該所は緑地帯の境域は解除の予定にありたるものにして殊更建築に関し東京都知事の許可を要せざる状況にあつたのである。

以上に依り原決定は誤解に基因するものにして須らく之を取消して更に相当の御裁判を仰ぐ次第であります。

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